地域 :
種類 :
家族構成 :
依頼の理由:
妻が雑誌を見て、いくつかの建築事務所を回って「ここしかない」と
山の手の少し急な坂道を上った先、ゆったりとした住宅地の一角に計画した、木造2階建て/建築面積21坪/延べ床面積36.5坪の住宅です。周辺は四季折々に変化する六甲山を感じることができる神戸らしい町並み。大学や教会が多く点在する関西有数の文教地区であるということも、良い雰囲気を形成しているひとつの要素です。
プランニングの過程でもっとも意識したのは、西隣の六甲教会です。1956年完成の木造のベルタワー(鐘楼)と、その昼と夕方に鳴らされる美しい鐘の音、ドーム型の聖堂や春に咲き誇る敷地内の桜は、この地域の象徴として親しまれています。聖堂は震災後に建て替えられているため、長期的にみても様相が変わることはあまりないでしょう。この〈六甲教会の景観〉は、ぜひうまく取り入れたいものです。
もうひとつは、敷地が南北に伸びる細長い形状であることです。間口も狭く、プランニングは簡単ではありません。そのなかで効率よく/プライバシーも守りつつ、環境特性を最大限に活かした光あふれる住まいを実現すること。たとえば敷地のどこへ庭を配置するか、暗く長い廊下を避けるにはどうしたらよいか──敷地環境を丁寧に読み解き、課題をひとつひとつ解決していくことで、自然にひとつのかたちが浮かび上がってきました。
テーマは〈フロントヤードの家〉です。庭を建物の前面/南側に配置することで、プライバシーを守りつつ光を取り込み、また建物も効率良くコンパクトにまとめることができます。あえてアプローチを兼ねたフロントヤード形式をとることで、ファサードもとても個性的なかたちとなりました。
この18帖の〈フロントヤード〉は一部屋根がかかっていて、眺めるだけの庭ではなくアウトドアリビングとしても活躍します。24帖のLDKとあわせて42帖の大きな〈家族の空間〉を楽しんでいただけたらと思います。